彼の腕のふりが左右で異なるのは、左側を並んで歩く女の子までの、たぶん10センチ弱の距離を、つかず離れず埋められないからか...自転車に乗ってゆらゆら帰る(朝帰りでした)道すがら、そんなふたりを見ました。
男性の方は身体も大きくて、普段は歩くの早そうな感じです。右腕のいきおいからもそれがつたわります。なのに、女性と並ぶ左腕といったら、もう不自然に静かでまっすぐなまま固定されています。体にぴったりくっついているのでもなく、手をにぎるでもなく。彼の体、彼の左腕、彼女(いたって普通な様子)ぐらいの配置です。
おそらくはいつもより速度を控えめに歩く彼は、あの状況下で彼女までの距離とその存在を、まるで何らかのアンテナか静止衛星のように、捉え続けているようです。距離を縮めたいのか、それともくっつきすぎないためなのか、はわかりませんが、なんとも不思議な空間でした。
こんな時、ふたりの関係についてふみこんだ想像をするのも楽しいかもしれませんが、それよりも個人的には、あの左腕のこわばりの感覚を想像しては、がんばれ少年、とはなはだ勝手ではありますが応援したい気になりました。
ねぇねぇ、雨、もうちょっと降ってればよかった(傘は女性の方だけが持ってた)?