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おでしー

DVD『オー、ブラザー』を見ました。

きちんと計算された作品です。よく考えると変な設定な気もするんだけどそれも含めて許せるっていうか。だってコーエン兄弟だもんね。脚本も演出、ついでに言えば画面の込み具合(空き具合)とか字幕に乗らない工夫なんかも含めて、気配りが利いています。それに見た目はレトロな感じだけどあれこれ特撮技術を使ってたりするのも(うまくはまっているという意味で)自然です。

主人公たちが出会う状況の多様さがこの作品の特徴でしょう。『オデュセイア』が原作だなんていわれて気づいたし。たしかに冒険劇っぽいところがありますね。加えてロバート・ジョンソン的エピソードとか、さまざまなネタが入っています。知識が豊富な人たちの作品は、見る側にもそれなりの準備ができているとさらに楽しめますよ、という例のひとつです。

登場人物が劇中で歌うというのは、見ている人の時間を適度に奪いつつ調子を整えてしまう効果があるようです、というのは今回の発見でした。本作品でも広告や娯楽のための音楽があり、ラジオやレコードが流通を助けます。その一方でたき火を前に歌われるしんみりとしたものも出てきます。労働歌や鎮魂歌も含め、売れる目的のものとは別の存在感があります。そのバランスも作品に魅力を加えています。

さて、次はなにを見ようかな。

おまけ:
見る側の知識については、スターウォーズみたいにある程度閉じた楽しみを期待するのもいいけれど、この作品みたいに作っている人たちとある程度共有された教養とか経験とか価値観が必要なことを感じることがあります。これは音楽とか小説とかでも同じですね。
なんだか最近売れているらしいけど、これってなんとかに「インスパイア(すでに死語?)」されちゃってるやつじゃん、みんなかわいそうに、みたいな。本歌取りっていうんだっけ、でも、元ネタがわかっているからこそ成立する空間とかそこでの距離感みたいなのが楽しいはず。細かすぎても疲れるけど、あとから「当時はまだ青かったなぁ」ってあとから思ったりする。
そういう手間とか時間がかかるけど、それでこそ楽しめる世界、みたいなのはやはり最近は敬遠されがちな時代なんでしょうか。逆説的ですが、だからこそ瞬間に良い悪いを判断できるってこともあると思うんだけど。
(...ってことを書いている時点でおっさん気味なんでしょうか、もしくは書いているだけ若いのかもしれません。...ってことを判断できるのはいまじゃなくて後からのみなわけですな。もちろんそれを先取りできるのが先人の残してきた作品とか歴史の持つ価値のひとつなんですけどね。)

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コメント (1)

szk:

もちろん、作品の持つ意味とか原因とか考えはじめると限度はないんですけどね。下手すると幼少期の経験が与える影響がどうのこうのとか、こう考えてしまう私の特性、みたいなことになってしまうんでしょうけど。文学評論みたいなのってそんなところまでいってるんだっけ?
別に「楽しめればいいじゃん」って意見を全否定するつもりもありません。それはそれである程度正義というか強さを持っているし、そこで楽しさを回収してしまうのもひとつの手だし。

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2006年02月15日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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